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人口変化とその影響を明らかにし、変化対応を支援するブログです。

Google翻訳が日本のゴールドカラー層を切り崩す

GoogleGmailやカレンダーなど様々なサービスを提供していますが、提供するサービスの一つに『Google翻訳』というものがあります。これは57種類の言語を瞬時に翻訳できる無料の翻訳サービスで、Google翻訳が対応している言語同士であれば、どの組み合わせでも単語、文、ウェブページを翻訳できるというものです。Google翻訳のURLはこちらになります。


私は今まで全くこのサービスを知らなかったのですが、先日イタリアに旅行した時、Google翻訳に思わぬ形で遭遇しました。それはローマからナポリ行きの直通電車に乗った際の出来事です。私の隣に座っていたのがいかにも現地に住んでそうなナポリ人の男だったので、「せっかくだから現地の美味しいお店でも聞いておこう」と思い英語で彼に話しかけました。ところが、彼には英語が通じず、私もイタリア語が分からないので、会話が全く成立しませんでした。お店を聞くのは諦めて本でも読もうかな・・・と思った瞬間、彼はiPadを取り出しGoogle翻訳を用いて「どこの国からきたの?何か用?」と聞いてきたのです!私もGoogle翻訳を用いてイタリア語に変換し、「日本から来たんだ。ナポリの美味しいお店知らない?」と返事をしました。ここから2時間Google翻訳を通してコミュニケーションが成立し、現地の人しか知らない美味しいお店や観光地を教えてもらったり、彼がiPhone2台持ってるアップル大好きなギークであることや、彼女が2人いること(いかにもナポリ人っぽい)などを知ることができました。


Google翻訳のおかげで現地の人しか知らないお店や観光地に行くことができてナポリを満喫できたのですが、Google翻訳の影響力は単なる旅行に留まらないと思います。なぜなら、Google翻訳は言語の壁を取り除くことによって日本の階層秩序を崩壊させる可能性があるからです。特にゴールドカラーと呼ばれる階層は切り崩されると思います。階層で有名なのは、肉体労働主体のブルーカラー、頭脳労働に就くホワイトカラーの区分ですが、1990年代以降は新しくゴールドカラーという層が出現しました。


ゴールドカラーの最大の特徴は「移動距離の長さ」です。世界を股にかけて行動する人とも言えます。例えば、ブルーカラーが地元の専門学校を出て地元の企業に就職し、ホワイトカラーが東京の大学を出て日本国内を転勤するのに対し、ゴールドカラーは子供の時から英語を学び、大学時代にオックスフォードに留学し、日本で3年働いた後、インドで海外勤務を経験し、シリコンバレーで起業し、そして日本に戻ってくるようなイメージです。


このように、世界を股にかけて働く人はホワイトカラーの中でも一握りであり、ホワイトカラーより所得水準が高く、働く企業を自分で選択できることから、新しくゴールドカラーと呼ばれるようになりました。ホワイトカラーとゴールドカラーを分けるものは、語学、収入の高さ、という2点です。日本では特に、語学ができないから国内勤務、語学ができるから海外勤務という区分のされ方が多いように感じます。語学ができるから世界を股にかけて働けるのであり、世界を股にかけて働けるからこそ収入が高く、収入が高いからこそ色んな国に移動する飛行機代やホテル代を払えるのだと思います。


しかし、Google翻訳の出現によって、日本のゴールドカラー層は切り崩されるしょう。なぜなら、語学、収入の高さというゴールドカラーの2つの源泉が根底から覆されるからです。


第一に語学ですが、Google翻訳は近い将来に音声認識を備え、その国の言語を知らなくてもある程度コミュニケーションがとれるようになると考えられます。Googleはすでに音声による検索サービスを提供しておりGoogle翻訳はすでに57種類の言語を瞬時に翻訳できるので、これらを組み合わせればGoogleが通訳をするサービスはいつでも提供可能な状態です。Google翻訳により、ゴールドカラーの成立条件の根底である語学の優位性が薄れると考えられます。


第二に収入の高さですが、日本人のゴールドカラーの収入は相対的に下がると考えられます。収入は本人の能力よりも、労働市場の需給で決まります。例えば、才能ある作家やミュージシャンの給料が低いのは、自分の書いた本や音楽を聞かせたい人が世の中にたくさんいて、労働市場が常に供給過剰なためです。日本ではこれまで語学堪能な人が少なかったため、その希少性からゴールドカラーは高収入を得ることができました。しかし、Google翻訳が登場すれば皆が一定以上の語学能力を有することになるため、希少性が大幅に減少します。その結果、語学の希少性から高収入を得ていた人は収入が下がる可能性が高いです。Google翻訳によって、人々が海外にもっともっと気軽に行けるようになれば、移動距離の長さを特別視すること自体が不自然となり、「移動距離の長さ」をその特徴とするゴールドカラー層は、徐々に切り崩されると考えています。


<まとめ>
(1)ゴールドカラーという「移動距離の長さ」を特徴とする階層が出現した。
(2)ゴールドカラーの源泉は、語学と収入の高さの2点である。
(3)彼らの源泉が、Google翻訳によって切り崩れる可能性がある。
(4)その結果、今後日本ではゴールドカラーが減少すると考えられる。