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Population

人口変化とその影響を明らかにし、変化対応を支援するブログです。

ユースバルジが失業許すまじと怒った中東革命

チュニジアやエジプトを筆頭に北アフリカ・中東地域で反政府デモが次々と発生しています。以下はそのきっかけとなったチュニジアジャスミン革命に関する記事です。

昨年12月17日、北アフリカの小さな共和国「チュニジア」の南部の小都市シーディ・ズゼイドで、26歳の青年が抗議のために市役所前で焼身自殺をした。この出来事がチュニジアで革命を起こし、エジプトの反政府運動を惹起し、ムバーラク政権を追い詰め、アラブ諸国を動揺させている。アラブ諸国では、チュニジアやエジプトと同様に大統領一族や王族による長期政権、さらには世襲を行っている国も多く、この反政府運動の大津波は今後も拡大していく可能性が大きい。


<「ジャスミン革命」が引き起こしたアラブ諸国の革命運動>

 チュニジアでは、イスラム主義を弾圧し、23年もの長期政権だったベンアリー大統領が1月14日に国外逃亡したことで政権が崩壊した。大統領が政治と経済を支配し、イスラーム主義を弾圧していたことに対して、民衆の怒りが爆発した。チュニジアを代表する花「ジャスミン」から名付けられたこの「ジャスミン革命」は、チュニジア国内から北アフリカ、中東アラブ諸国へと“燎原の火の如く”拡大した。

 日本では、あまり大きく報道されていないが、「ジャスミン革命」の津波が押し寄せた国は、この半月余りでアルジェリア、イエメン、ヨルダン、モーリタニアスーダン、トルコ、アルバニア、そしてエジプトなど10カ国近くに上る。これらの国では、政府に対する抗議の焼身自殺が相次いだり、反政府デモが行われたりしている。なかでもエジプトは、政府に対する抗議の焼身自殺が相次いだうえ、1月25日の休日(警察記念日)に民衆が警察の拷問に対する「怒りの日」と定め、大規模な反政府デモに発展した。ムバラク大統領の29年という長期政権の腐敗に対する民衆の怒りが爆発した。

 そもそも、自殺を禁じているイスラム教において政府に対する抗議として自殺をすること自体が異常な状況だ。それだけ、民衆の政府に対する抗議が強いものであることが伺われる。1950年代から60年代に作られた現在のアラブ諸国の政治体制は、チュニジアやエジプトと大同小異だ。独裁に近い長期政権と大統領一族や王族による支配は、機能不全を起こし始めている。アラブ諸国における反政府運動あるいは革命とも呼ぶべき大きな津波は、チュニジアやエジプトだけにとどまらず、多くのアラブ諸国に波及する可能性を秘めている。

そしてこの日記を書いている今も、エジプトで数十万人単位のデモが発生しています。


【カイロ時事】エジプトのムバラク大統領退陣を要求する反政府デモが続く首都カイロ中心部で1日、野党勢力による「100万人の行進」の呼び掛けに呼応し、大規模デモが実施された。AFP通信によれば、同日午後(日本時間同夜)現在、参加者は数十万人とこれまでで最大規模に達し、1月25日から8日目を迎えた反政府行動は、最大のヤマ場を迎えた。

 中心部のタハリール広場には早朝から参加者が続々と集まり、展開している軍の兵士が、爆発物などを持っていないか参加者の身体検査を行っているが、デモは規制していない。 軍は1月31日、「民衆に対して武力を行使しない」とする声明を出し、中立姿勢を打ち出している。これで野党側は自信を得たとみられ、デモが予想以上に拡大する可能性もある。

 ムバラク政権は、スレイマン情報長官の副大統領任命、新内閣の組閣など、矢継ぎ早に事態収拾に向けた手を打っているが、根本的に国民の要求に応えていないとみなされ、どれも有効打となっていない。 スレイマン副大統領は、野党側に対話を呼び掛けたが、野党筋は1日、ムバラク大統領が辞任するまで新政権との対話に応じないと強調した。 

チュニジアの焼身自殺からはじまった今回の中東革命は、様々な原因が指摘されています。例えば、失業、独裁政権への不満、政治腐敗、食糧価格の上昇、テクノロジーの普及などです。マスコミはそれっぽい理由を適当に羅列してますが、一体どれが本当の理由なのでしょうか?私は今回の革命は『ユースバルジによる失業への不満』が背景だと考えています。


ユースバルジ(youth bulge)とは、「過剰なまでに多い若者世代」のことです。バルジ(bulge)とは、年代別の人口をグラフに表したピラミッドの外側に異様に膨らんだ部分を指す言葉です。急激な人口増加を経験する国は、人口ピラミッドで若者世代が異様に膨らむことになります。イスラム圏では1900年には1.5億人だった人口が、2000年には12億人と8倍に増加しており、ユースバルジが発生しました。若年層の増加に雇用創出が追い付かず、チュニジアやエジプトでは若年失業率が30%を超えていました。


職につけなかったユースバルジに残された道は6つしかありません。国外への移住、犯罪、クーデター、革命、集団追放による少数派のポスト奪取、そして越境戦争です。過去500年間、ヨーロッパで人口が急増した際には、若者達がこの6つの道のすべての行動をとりました。日本でも戦後に若者世代が急増する時代がありましたが、奇跡的な経済成長によって大事には至りませんでした。安保闘争のような若者中心のデモが発生しましたが、雇用が創出できていたおかげで、中東ほどの大惨事にはならなかったわけです。ところが、チュニジアやエジプトでは人口増に雇用創出が追い付かず、行き場のないユースバルジが発生してしまいました。これが今回の革命の主因です。


だいたい食糧価格上昇が革命の主因ならば、世界で食糧価格の上昇率が最も高い地域から革命が発生するはずです。ところが、今回の革命は2008年の食糧価格高騰時の全世界的なものではなく、中東の若年失業率の高い地域でだけ発生しています。また、チュニジアで焼身自殺した男性の職業は「路上での野菜売り」であり、食糧に最もアクセスしやすい立場の男性でした。デモの主張を聞いていも、失業や独裁政権への不満が大半で、食糧価格高騰の抗議は殆どありません。実際にデモ隊が襲撃した場所をみても、チュニジアでは飲食店を襲うようなことはなく、政府の施設や大統領の親族の家が狙われています。


繰り返しますが、今回の革命の主因は『ユースバルジによる失業への不満』です。つまり、政治改革が行われたり、食糧価格が下がったとしても、30%を超える若年層の失業率が下がらなければ、中東地域でいつまたデモが発生してもおかしくないということです。これは民主主義やインフレの問題ではなく、若年層の急増というイスラム圏の構造的な人口の問題です。