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人口変化とその影響を明らかにし、変化対応を支援するブログです。

セブンイレブンの高齢者向け食事宅配ビジネスが本気だし過ぎでヤバい!

都会だろうと田舎だろうと至る所にあるセブンイレブン。当初は買ってから30分以内に消費されるモノを売るというのがお店のコンセプトでした。おにぎり、ペットボトル飲料、アイス、肉まん、漫画、ボールペンなんかはどれも買った後すぐ食べたり使ったりするものです。このように利便性消費を提供することで順調に売り上げを伸ばしたセブンイレブンは、1970年代の創業からわずか20年で店舗数が1万を超え、日本を代表する小売企業となりました。


30分以内に消費されるモノを店内に一通り揃え、日本中への店舗拡大を押し進めた後は、別な方法で売り上げを伸ばす必要があります。次にセブンイレブンが目指したのは生活インフラとしてのサービスの提供でした。全国に店舗があるというメリットを活かして、公共料金の払い込み、端末によるチケットの予約、ATMの設置などのサービスを拡大しました。この段階のビジネスは、基本的には店内で料金精算を行うものでした。私達はセブンイレブンの店内まで出向く必要がありました。


セブンイレブンは近くにあるため、大多数の人にとっては、行くのに労力がほとんど必要ありません。しかし、世の中には、コンビニの距離さえも労力が必要な人がいます。それは足腰の筋力が衰え始めた高齢者です。もちろんアクティブシニアという言葉があるように、全ての高齢者が外出をおっくうと感じている訳ではありません。ただし、少なくとも20代や30代と比べた時に、彼らが想像出来ない様々な部分で外出への障壁が高くなっているのは事実です。


そんな高齢者の気持ちを汲み取り、セブンイレブンが最近になって高齢者向け食事宅配ビジネスを本格展開しています。この力の入れようが半端じゃありません。全国のセブンイレブンの店頭に『お食事を宅配します!』ってチラシがあるので、今度セブンイレブンに行ったら手に取って見て下さい。変化対応業である小売の巨大企業が、『今後日本でモノを売るとは高齢者にモノを売ることである。』と明確に主張しています。近くに店舗がない場合は、そのビジネスを説明した以下のホームページのURLをご覧下さい。


お惣菜おまかせ7日間メニュー | おすすめメニュー | セブンミール : セブンイレブンのお食事配達サービス
http://bit.ly/oRYSsD


セブンイレブンが本気だなと思うのは、既存の的外れの高齢者向けビジネスとは違い、きちんと高齢者向けのニーズを捉えたビジネスになっているからです。将来ハーバードあたりで高齢者向けビジネスのケーススタディーに使えるんじゃないかって位、高齢者向けビジネスで重要なポイントをおさえてます。セブンイレブンのこのビジネスのどこが凄いのでしょうか。大きく3つの理由があります。


1.健康に配慮した食事になっている
ホームページやチラシをみれば一目瞭然ですが、メニューが明らかに健康志向です。15品目以上の食材を使用し、管理栄養士が監修したことをアピールしている他、平均300kcal、塩分2.2g以下のおかず構成ということを大々的に表示しています。年を取るにつれて増える高血圧等の病気への懸念や、医者の指導から塩分を控えた食事をしたいというニーズを上手に捉えています。加えて、お弁当のご飯は『190gと240gの選べるごはんでもったいないを解消』と書いてあります。今の高齢者は戦後の食べ物が決して多くない時期を経験しており、残すのはもったいないという価値観があります。これだけ健康に配慮した商品を、今どれだけの日本企業が作れるのでしょうか。上手に売れるのでしょうか。今20代で起業とかを目指してる人、30〜40代で先頭にたって商品企画業務を行ってる人で、高齢者のニーズを捉えた商品作りをできる人がどれだけいるのでしょうか。


2.高齢者を露骨にターゲットにしていない
商品は明らかに高齢者向けですが、セブンイレブンは対象顧客が高齢者以外にも居るような書きぶりをしています。忙しくて料理を作れない若者とか、子供の面倒を見るのに忙しい主婦とか。何でこんなことするのでしょうか。それは、高齢者が高齢者だけを露骨にターゲットにした商品が欲しくないことを、セブンイレブンが良く分かっているためです。実際、チラシの裏には『買い物へ行けない高齢のご家族がいる場合など、カタログをご家族に、請求書をご自身宛に分けて送れるので代わりのお支払いが可能!』と高齢者向けに商売していることを示す文章があります。


高齢者は年寄り専用のサービスじゃなくて、自分より若い人が利用しているサービスを使いたいのです。これを分かってない日本企業がいかに多いか。実年齢より若いものが買いたいという原理が働いてるビジネスはいくつもあります。例えばヨガ用ファッション。アメリカのルルレモンというヨガ用ファッションの会社は、この原理を利用して現在急成長しています。ヨガは主要顧客が40代以上ですが、この年代は実年齢にふさわしいデザインのヨガ用ファッションをオバサンっぽいと不満を持っていました。この不満を解消するため、ルルレモンは実年齢より少し若い30代のデザインをヨガ用ファッションに取り入れました。その結果、デザインが爆発的に支持され、今やこのジャンルを代表する企業になりました。あからさまにその年齢層をターゲットにした商品を提供しないということがこの企業の成功の秘訣です。高齢者向けビジネスでも同じことが言えると思います。


3.儲かるビジネスモデルになっている
このビジネスモデルが美味しいのは、定額制であることです。携帯の通信契約や業務用プリンターの保守サービスのように、定額制で毎月利用して貰えるサービスはとても儲かります。これまでコンビニがモノを売るにはお店に来てもらう必要がありました。客をお店に呼ぶために、おにぎり100円キャンペーンやったり、777円ごとにくじを用意したり、最近だと夜にクーポンを用意して値下げ(という名の在庫調整)までやってます。広告をうったり値下げをするのは費用がばかになりません。ところが、定額制の宅配サービスにおいては、一回契約を結ぶと、高齢者が契約を解除しない限り売り上げが半永久的に発生します。しかも定価で販売できます。事前に販売量が分かるため、在庫が少なくてすみます。売上や利益も素晴らしいですが、同様にコストも最小限ですみます。すでに全国の住宅地付近(駅前の商業地だけじゃないのがポイント)に店舗をもち、配送インフラをもっているため、初期投資は極めて少額ですむはずです。


以上3点だけでも凄いけど、セブンイレブンがさらに凄いのは弁当以外のモノも売ろうとしてるところです。毎日の食卓の基本アイテムと題して、米、パン、おかず、牛乳、卵、肉製品、野菜、なんかも売っています。現代版御用聞きですね。これらの商品を値引き競争を避けて販売できたらどれだけ儲かることか。生鮮食料品を在庫リスクなしで売ることがどれだけ利益につながるか。イトーヨーカドーを同じグループに持つセブンイレブンは、そのことが良く分かっているのです。

日本企業が高齢者向けビジネスを上手に展開出来ず、海外展開に苦心する間に、セブンイレブンが総資産800兆円と言われる高齢者層の消費ビジネスを押さえようとしています。




【講演会告知】少子高齢化に興味のある方へ
※ベストセラー『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』の著者である藻谷浩介先生をお招きして、2012年9月7日(金)19:00からNPO法人東京自由大学にて少子・高齢化の入門講座を実施します。どなたでも参加可能なので、ご興味ある方は以下のページをご覧になるか、東京自由大学までご連絡下さい。
【講演会告知】9/7(金)19:00-21:00『人口減少と日本経済の進路』藻谷浩介(日本総合研究所調査部主席研究員)



<書評一覧>
No.1→少子社会日本-もうひとつの格差のゆくえ/山田昌弘
No.2→医療戦略の本質―価値を向上させる競争/マイケル・E.ポーター、エリザベス・オルムステッドテイスバーグ
No.3→利益第二主義―過疎地の巨大スーパー「A-Z」の成功哲学/牧尾英二
No.4→50以上の世界―「標準世帯」の終わり・から/油谷遵、辻中俊樹
No.5→デフレの正体 経済は「人口の波」で動く/藻谷浩介