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Population

人口変化とその影響を明らかにし、変化対応を支援するブログです。

少子社会日本-もうひとつの格差のゆくえ/山田昌弘

少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ (岩波新書)

少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ (岩波新書)



100字要旨
若年男性の収入の不安定化とパラサイト・シングル現象の合わせ技が日本の少子化の主因である。そして、少子化に対処するためには、出生率を上げる政策と、少子化に対応した社会を作る政策の両方が求められている。



少子化の現状:(1)総人口減少、(2)出生率低下、(3)未婚率急増、(4)夫婦出生率低下
2005年、日本の総人口が統計開始来初の減少を記録。合計特殊出生率(女性1人あたりが一生涯に産む平均子ども数)は1.26と過去最低を更新した。更に、未婚率が急増し、30代前半の男性はほぼ2人に1人、女性は3人に1人が未婚状態にある。結婚する人の減少という形で少子化が進むだけでなく、最近では夫婦一組あたりに生まれる子ども数の低下も始まっている。つまり、結婚しない人、結婚しても子どもをもたない人、そして結婚して子どもをもつ人への分解が進行している。一方、殆どの未婚者は結婚を望み、子どもをもちたいと思っており、既婚者も子どもを2人以上もちたがっている。なぜなら、社会が個人化すればするほど、信頼できる関係が必要となり、近代社会においてあらゆる関係のうち最も信頼できる関係は血縁や婚姻で成り立つ家族と信じられているからである。それでは、どうして日本で家族形成ができなくなってしまったのだろうか。


少子化の原因:若年男性の収入の不安定化とパラサイト・シングル現象
若年男性の収入の不安定化とパラサイト・シングル現象の合わせ技が日本の少子化の主因である。高度経済成長期には、殆ど全ての若年男性が将来収入見通しの安定と上昇を期待できた。また、結婚前の生活水準が低かったため、結婚生活・子育てへの期待水準も低かった。しかし、1975年以降、豊かな親の元で育ち、結婚生活や子育てに期待する生活水準が上昇する一方、低成長経済への転換により、若年男性の収入の大きな伸びが期待できなくなった。その結果、晩婚化、未婚化が始まった。加えて、パラサイト・シングル(親との同居により可処分所得が高くなった未婚者)の増加によって、結婚の経済的魅力が低下したことも少子化を促進した。1990年以降は、世界経済のグローバル化と非正規雇用の増加によって、若者間での収入格差拡大、若者の将来の収入見通しの不確実化が生じ、これが少子化に拍車をかけた。



少子化対策出生率を上げる政策、少子化に対応した社会を作る政策の両方が必要
少子化対策には「出生率を上げる」政策と「少子化を前提とし、それに対応した社会を作る」政策があるが、その両方が求められている。前者に関しては、(A)全ての若者に希望の持てる仕事と将来にわたって安定した収入が得られる見通しを与えること、(B)どんな経済状況の親の元に生まれても子どもが一定水準の教育が受けられ大人になることを保証すること、(C)格差社会に対応した男女共同参画を進めること、(D)若者にコミュニケーション力をつける機会を提供すること、が必要だ。後者に関しては、(E)労働力不足に対応するために女性や高齢者の就労率を上げること、(F)社会保障費の増加に対応するために全世代の拠出を増やすとともに高齢者の受給を減らすこと、(G)経済成長率低下に対応するために経済の一層の効率化や高付加価値産業の育成などによって一人当たりの生産性を上げること、が必要だ。



斬新な点
少子化の議論において、お互いが結婚したいと思う相手に出会うこと、子どもを育てるのに十分な経済力があること、というあたりまえの事実が無視されてきた。その理由は、結婚相手としての魅力や子どもを育てていくための経済力には格差があるが、政府や社会は格差の存在を認めたくないからである。少子化の第一のタブーは性的魅力を含んだ魅力格差である。男女が結婚するには、お互いが相手に結婚相手としての魅力を感じる必要があるが、この魅力には格差がある。第二のタブーは経済格差である。日本では収入の低い男性が結婚しにくいという事実を著者は何度も指摘してきたが、この事実を公表しようとすると新聞など様々なところからストップがかかった。第三のタブーはセックスの変化である。1980年頃から婚前・婚外のセックス関係の増加、夫婦のセックスレスの増加、という事実が生じているが、人口学の議論ではこの事実が考慮されないことが多い。