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Population

人口変化とその影響を明らかにし、変化対応を支援するブログです。

医療戦略の本質―価値を向上させる競争/マイケル・E.ポーター、エリザベス・オルムステッドテイスバーグ

医療戦略の本質―価値を向上させる競争

医療戦略の本質―価値を向上させる競争



100字要旨
医療における価値とは、経費1ドル当たりの健康上の成果である。現在のコストを巡るゼロサム競争から、病態の診療実績に基づいた医療価値を向上させる競争へと移行すれば、医療システムは大幅に改善するだろう。



医療の価値とは経費1ドル当たりの健康上の成果である
医療における価値とは、経費1ドル当たりの健康上の成果である。医療の価値が生み出されるのは病態のレベルであって、病院や開業医というレベルではない。病態とは、それに選任し、かつ連携した医療が功を奏す一連の健康状態を指す。共通の施設で診療を受けることにメリットがあり、かつ診療と密な連携が必要な、合併しやすい状態をまとめたものである、とも言える。ここでいう病態という用語には、疾病や体調不良、障害、それに妊娠などの生理現象も含まれる。病態に対応する場合、医療の価値は個別の治療行為からではなく、予防、診断などのケア・サイクル全体を通して生み出されている。そのため、病態のレベルで、成果とコストの両方を、個別の治療行為や処置についてではなく、ケア・サイクル全体にわたって医療価値を評価しなくてはならない。ただし、短期的にコストを削減できても、長期的にコストが増大するようでは医療価値の向上とは言えない。



医療提供のバリューチェーンは予防→診断→準備→介入→リハビリ→管理
医療提供のバリューチェーン(CDVC)とは、ある病態に対する医療提供のプロセスを書き出し、分析するための体系的な枠組みである。CDVCは常にモニタリング/予防から始まる。これには、患者の状態追跡、リスク評価、疾患の重症度を予防するための対応が含まれる。CDVCは、診断、準備、介入(治療行為)、リハビリの順で進行し、最後にモニタリング/管理で終わる。後者のモニタリングは、良好な健康状態を維持し、再発を最小限とするために長期的に病態を管理する業務である。更にケア・サイクルの各段階を通して、アクセス、患者評価、情報提供、ノウハウ管理という四つの付帯的な医療提供業務が行われる。アクセスとは、受診病院内での移動といったアクセス方法の他、遠隔モニタリングやIT診療などその他のアクセスも意味する。患者評価は、患者の医学的な状態の評価を意味する。そして情報提供は、患者への通知、教育、指導などを意味する。



診療実績に基づいた競争こそが医療価値を向上させる
米国の医療提供体制の破綻原因は、競争にあるのではなく、競争の種類が誤っていることにある。現在のコストを巡るゼロサム競争から、診療実績に基づいた医療価値を向上させる競争へと移行すれば、米国の医療は大幅に改善する。そのために、医療提供者は病態を中心とする業務へ組織を再編し、診療実績を評価・改善し、強みを持つ分野に専念する必要がある。保険者は医療提供者の実績を評価し、保険加入者と契約を複数年で結ぶ必要がある。医療関連メーカーはケア・サイクル全体を通して独自の価値を提供することで競う必要がある。消費者は自身の健康管理に積極的に関わり、優れた診療実績の医療提供者を選択する必要がある。雇用主は、医療給付費の最小化ではなく医療価値向上を目標とする必要がある。政府は最低限必要な保険適用範囲を設定し、診療実績に関する情報の収集と報告を義務化し、競争を阻む障壁を排除し、ITの普及促進を図る必要がある。



斬新な点
全ての医療関係者が医療価値に焦点を合わせたら、医療システムはどのような姿になるのだろうか。医療提供者は、全ての患者にあらゆるサービスを提供するのではなく、真に優れたサービスだけを提供するようになる。従来の専門診療科を軸にした病院は、病態を軸に再編され、統合型診療ユニットへと発展していく。価格はケア・サイクル全体をカバーしたものになり、個別のサービスに対する山のような請求書はなくなる。また、全ての医療提供者が診療実績を評価し、それを公表するようにもなる。消費者は、現在よりも単純で効果的な医療システムを体験することになる。ただし、不健康な生活に対する責任も重くなる。医療給付は、疾病予防や疾病管理など従業員の参加を中心としたものに改められる。そして、地方規模や全国規模の優れた医療提供者が、地域を越えてサービスを提供するようになり、各地の施設と様々な形で連携するようになるだろう。