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人口変化とその影響を明らかにし、変化対応を支援するブログです。

利益第二主義―過疎地の巨大スーパー「A-Z」の成功哲学/牧尾英二

利益第二主義―過疎地の巨大スーパー「A-Z」の成功哲学

利益第二主義―過疎地の巨大スーパー「A-Z」の成功哲学

 

100字要旨
常識外れの経営で急成長を遂げる巨大スーパーが過疎地に出現。その名はAZ。同社飛躍の秘訣は高齢者に特別配慮した店づくりにあるのではなく、徹底した全顧客志向と小売業の前例に囚われない現場主義にある。
 


常識外れの経営で急成長を遂げる巨大スーパーが過疎地に出現
年率30%の売上成長を続け、業界関係者がこぞって訪れる巨大スーパーが過疎地に存在する。その名はAZ。少子高齢化に最も対応したスーパーと言えよう。1997年、過疎化と高齢化が進む田舎町、人口わずか2万7千人の鹿児島県阿久根市にAZは誕生した。日本初の24時間営業の大型小売店で、敷地面積は東京ドーム3.6個分、商品点数は23万点。食料品、家電、車など生活に必要なものは何でも揃える。従来の小売業では商品の回転率を高めるために品揃えを売れ筋商品に絞るのが常識だが、AZでは販売効率を一切追求しない。商品のPOS管理もしない。また、特売を実施せず、集客チラシも殆ど配布しないため、販売促進費は業界平均の20分の1以下となっている。商品の仕入れは地元業者を最優先。人材教育はマニュアル、社員教育、定年制度が一切ない。このように小売業の常識全てを否定するAZの売上は現在100億円を突破し、今も伸び続けている。
 


AZ飛躍の秘訣は徹底した顧客志向にあり
AZ社長の牧尾氏は現在の小売業を「売り手の都合で商売をしている」と痛烈に批判する。例えば、地元の小売店は、「商品の品揃えが少ない上に古い。棚の商品の値段は定価に近い。様々な商品を一か所で買い物できる店もない」と切り捨てる。また、大手小売業についても、「人口が多いところに出店して、品揃えは売れ筋商品に絞り、回転率を上げる大手小売業の考え方は、消費者の視点から考えられたものではない」「お客様を惑わすような目玉商品を用意して、宣伝広告費をかけて購買意欲をかきたてる販売方法は売り手の一方的な都合に過ぎない」と手厳しい。このような問題意識が背景にあるため、AZは顧客志向が徹底している。例えば、AZは片道100円で自宅まで送迎する買物バスを運行している。過疎地にはバスなどの公共交通機関が殆ど走っていないため、自動車の運転ができない高齢者にも買い物ができるよう、自社で採算の合わないバスを運行している。
 
 
 
小売業の前例に囚われない現場主義がイノベーションを生み出す
AZは従業員に小売業の未経験者が多かったことから、業界の常識を無視したイノベーションが次々に誕生した。例えば、AZには仕入れの機能がない。他のスーパーにあるような商品部もバイヤーも存在しない。その機能を代替するのが各売り場の担当者だ。青果、家電など品種ごとに分けられた各店の32部門の売り場責任者に、仕入れ業者の選定、仕入れ商品の選定、仕入価格、数量、販売価格など、あらゆる運営が任されている。バイヤーを置かないのは、毎日商品を陳列して、お客様と接している売り場担当者こそが、売り場作りの答えを誰よりもよく知っているからだ。データを見る暇があったら売り場へ出るとの方針からPOSも見ない。36万点のデータをとても処理できない上に、管理販売をやればやるほど内向きになって、売る側の都合が優先されるためだ。また、売上高も利益も全く気にしない。数字を追いかけると、どうしても売り場に魅力がなくなるためだ。
 


斬新な点
過疎地のスーパーの本ということで、高齢者に対する配慮・サービスに注意して読んだのだが、驚くべきことにAZは高齢者に特別配慮した店づくりをしていない。赤ちゃんからお年寄りまで地域の全ての顧客を平等に考えた商品構成を行った結果、お年寄りが毎日の生活に必要とされる商品も揃うようになった。思えば、ルルレモンという米国のアパレル企業も、40歳以上の女性を対象に、実年齢より少し若い世代向けのデザインのヨガ用ウェアを販売して急成長した。また、セブンイレブンの弁当宅配ビジネスでも、高齢者向けの弁当とは気づかれないように巧妙にチラシが作られていた。このような事例から言えるのは、高齢者を対象にお店や商品を作る場合、明らさまに高齢者向けと分かる構成にするのは得策でないということだ。自分より若い世代も利用するお店だとアピールし、来店者に若い気分を味わってもらえる店舗の方が、おそらく高齢者に好まれるだろう。