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政府の成長戦略としては画期的!40歳定年制などで話題の『繁栄のフロンティア部会報告書』には何が書かれているか

2050年の日本の将来ビジョンを検討してきた有識者会議『フロンティア分科会』が、40歳定年制の導入を提言したことが話題になっています。



40歳定年制の前に、フロンティア分科会とは何ぞやという話ですが、国家戦略室によれば、『2050年までを視野に入れた我が国の将来像を描くとともに、国際的・社会的環境が大きく変化すると予想される2025年に向けた方向性を検討し、その内容を中長期ビジョンとして取りまとめて』いく組織だそうです。



この分科会が2012年7月6日に、40歳定年制を含む『繁栄のフロンティア部会報告書』を発表しました。この内容がとても素晴らしく、政府の成長戦略としては画期的だったので紹介します。これまでの政府の成長戦略の報告書と大きく違うのは、民間が主役というメッセージが強く打ち出されている点です。特に、以下の文章が秀逸です。



『そもそも2050年という将来に対して、政府が明確に成長産業のターゲットを示すことは限界があり、かつ弊害も大きい。今から40年前に、果たして誰がIT産業の今の発展ぶりを予想しえただろうか。*1この一例だけをとってみても、長期的将来にわたって産業の明確な発展を予測することは、ほぼ不可能であることは明らかであろう。特に我が国はすでに発展途上国ではなく、明確な目標となるような国も存在しない。このような中で、政府が特定の分野を決めて資源を集中させていくことには、慎重になるべきである。どのような産業が成長するかは、それぞれを評価するのは、市場であり、消費者である。イノベーションの創出や潜在需要の掘り起こしは、あくまでも民間の力で成し遂げられるものであり、政府は、国内の規制・制度の見直しや、経済連携を通じた国際的な事業環境整備など、民間の活力を十分に引き出す基盤づくりに専念することが望ましい。』



私は日本の成長産業に興味があるため、政府が発表する成長戦略はできる限り読むようにしているのですが、過去の成長戦略報告書というのは大体パターンが決まっています。まず日本の現状を分析し、次に何が問題点か明らかにし、最後に問題点を"政府が"どう解決するかを示す、というものです。日本の現状分析はどれも優れているのですが、最終的には政府主導で成長産業を産み出すという報告になっており、それで近年の日本の産業政策はことごとく失敗してきました。



なぜそういう報告書になるのかといえば、それは官僚が報告書を書いているからです。官僚はとびきり優秀ですが、(1)自分達で成長産業を予測できると考え、(2)自分達で成長産業を育成できると考え、(3)産業政策の拡大が自分や先輩にとって合理的なため、どうしても政府主導の産業政策という結論になってしまいます。ところが、今回の報告書は民間主導というメッセージが色濃く出ている。この点が素晴らしいのです。



成長戦略の方向性も、概ね賛同します。特に、2.社会保障や教育分野等での資格要件の緩和、4.年金の第3号被保険者の適用要件見直し、15.社会保障給付の効率化、は効果が大きいと思います。以下は『繁栄のフロンティア部会報告書』の主要提言一覧です。これが実現したら自分の仕事や日本がどう変わるのか考えると、面白いかもしれません。



<主要提言一覧>
1.雇用保険給付の組み換え(雇用調整助成金から再教育訓練給付へ)
2.社会保障や教育分野等での資格要件の緩和(介護福祉士、ホームヘルパー、教員免許等)
3.新たな民間仲介サービスの創出(再就職支援サービス、再教育サービス)
4.年金の第3号被保険者の適用要件見直し
5.所得税・個人住民税の配偶者控除の見直し
6.有期を基本とした雇用や金銭解雇ルールの明確化
7.皆が75歳まで働くための「40歳定年制」
8.小中高校段階からの外国人学生の受け入れ
9.実際に話せることを重視した語学教育
10.低所得世帯の子供への教育支援強化
11.地方自治体に対する権限と責任の移譲
12.徹底的な規制改革
13.企業の新陳代謝の促進(中小企業金融円滑化法等の廃止等)
14.内需型産業を成長・輸出産業に
15.社会保障給付の効率化(マクロ経済スライドのデフレ下での発動、支給開始年齢引き上げ等)

*1:実は予想しえた日本人がいます。詳細はこちら→[http://d.hatena.ne.jp/Kamiishi/20110305/1299341294:title]