読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Population

人口変化とその影響を明らかにし、変化対応を支援するブログです。

秋田市のエイジフレンドリーシティに関する取材レポート

47都道府県の中で最も高齢化が進んでいるのは秋田県であり、2011年現在の高齢化率は29.7%です。現在20.6%の東京もやがてそのようになると予想されるため、秋田県は高齢化に対応したビジネスや街づくりの先進地域として注目されています。例えば、高齢化対応に熱心なセブンイレブンは2012年に初めて秋田県に進出しましたが、その目的には高齢化に対応した小売店の研究があると言われています。その秋田県の県庁所在地である秋田市は最近、WHOと協力して日本の自治体で初めてエイジフレンドリーシティ構想を打ち出しました。これがどのような取り組みか調べるために、秋田市役所の担当の方にお話を伺ってきました。



秋田市役所



【エイジフレンドリーシティ構想に関して】
Q.エイジフレンドリーシティとは何ですか?
A.エイジフレンドリーシティとは、「世界中の高齢者に優しい都市」という意味の言葉です。「全ての人に優しい都市」という意味と誤解されることがありますが、あくまで高齢者に優しい都市を意味します。特に重要なのは、(1)市民参画や雇用などで高齢者が支える側にまわる、(2)社会システムを高齢化に対応させる、という2点です。WHOが2008年にエイジフレンドリーシティに関するプロジェクトを発表し、そのネットワークに100都市以上が参加しています。中には、国単位で参加している地域もありますが、日本からは唯一秋田市が参加しているだけです。


(公式HPより補足)エイジフレンドリーシティとは
「高齢者にやさしい都市」という意味です。エイジフレンドリーシティは世界的な高齢化・都市化・都市の高齢化に対応するために、2007年、WHO(世界保健機関)のプロジェクトにおいて提唱されました。WHOでは、世界各国で実施した聞き取り調査結果から、高齢者にやさしい都市かどうかは、8つのトピックについての検証が必要であると示しました。さらに具体的な検証を行うため、8つのトピックごとに84のチェックリストも発表し、それぞれの都市が自己診断ツールとして活用することを推奨しています。


【8つのトピック】
1.屋外スペースと建物
2.交通機関
3.住居
4.社会参加
5.尊敬と社会的包摂
6.市民参加と雇用
7.コミュニケーションと情報
8.地域社会の支援と保健サービス

Q.日本は高齢化先進国のはずなのに、世界的な高齢化対応プロジェクトへの参加は遅れているわけですね。どうして他の自治体は参加していないのでしょうか?
A.日本の他の自治体が参加できないのは、英語が壁になっているからだと思います。WHOとプロジェクトを進める場合、ジュネーブの担当者と英語でやり取りする必要があります。もちろん秋田市も英語が十分にできる体制とは言えないのですが、何とか進めている状況です。また、ご存知の通り、老年学の専門家が日本に少ないのも、プロジェクトに参加している市町村が少ない理由の一つです。加えて、このプロジェクトは国から数値目標が示されるのではなく、市民と一緒になって自分達の手で計画・実施・検証の仕組みを作る必要があるので、それも他の市町村が参加しにくい要因かもしれません。



Q.高齢化対応の取材にあたって、英語が自治体政策の壁になっているとは驚きでした。逆に、どうして秋田市は困難なWHOのプロジェクトに参加できたのでしょうか?誰かリーダーシップを発揮した方がいるのでしょうか?
A.現在の秋田市長がエイジフレンドリーシティ構想を掲げていたことが、秋田市がWHOグローバルネットワークに参加できた理由です。秋田市長が医療系の家系だったので、このプロジェクトを発見することができました(補足:穂積志秋田市長の父親は、ターミナルケアの先駆者として秋田県内初のホスピス病棟を設置したことで知られる外旭川病院を運営する医療法人惇慧会の会長理事として知られている。そのため、現在の市長も老年学の知識があり、高齢化対応にも熱心なのだと推察される)。



Q.WHOグローバルネットワークに参加すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
A.WHOからの客観的な意見がもらえること、他の都市とのネットワーキング(情報交換)、ポジティブな形での秋田市のPR、という3点がメリットです。



Q.現段階ではどのような行動計画がありますか?
A.現在、計画に参画する市民を募集している段階のため、まだ具体的な行動計画はありません。



Q.エイジフレンドリーシティ構想を初めとして、高齢化をポジティブな形で捉えようという動きが全国であるように思います。私もその一人ですが、具体的に高齢化のどこがポジティブかと尋ねられると、なかなか答えにくいものがあります。実際に、秋田で高齢化のメリットを感じることはありますか?
A.正直、まだ高齢化のメリットが見つけられないでいます。ただし、高齢化の事例をデータにして、市民に普及することで、意味があることを残せるんじゃないかと思っています。団塊の世代が高齢者の仲間入りをすると、また変わってくるんじゃないでしょうか。



Q.逆に高齢化で困っているのはどのような事柄でしょうか?
A.医療費の財政負担が大きくならざるを得ないというのが一番の問題です。次は、より元気に地域で暮らしていけるようにするか。全国的には、買い物弱者の問題が取り上げられてて、対策が必要だという声がありますが、突出してそれが課題になっているわけではありません。高齢者が若い人の車に乗せてもらって買い物に行けたりして、買い物弱者の問題は統計で把握しにくい部分があります。また、地縁が薄れているのも問題です。秋田独自の事柄としては、雪問題が大変です。冬場雪に閉ざされるため、雪かきは大変なのですが、高齢者の手だけでは厳しい部分もあります。



Q.東京では高齢社など高齢者の人材派遣を行う会社が出てきていますが、高齢者の雇用に関しては何か動きはありますか?
A.若者の失業が一番注目されているため、高齢者の雇用問題はこれからです。この問題を進める際には、生活のために働かざるを得ない高齢者と、趣味やボランティアのために働く高齢者を区別して考える必要があると思います。



Q.秋田は高齢化の先進地域ですが、どのような方から取材を受けることが多いですか?
A.自治体から電話をもらうことがある他、医療関連団体や企業からも問い合わせがあります。また、見守りサービス、タブレットの配布、などを高齢化に関連する商品を営業しにくる人もいます。海外だと、台湾、香港、韓国などからも取材があります。行政の役割が似ていて、欧米より聞きやすいようです。




<取材の感想>
取材に行った秋田市庁では、平成24年4月から「介護・高齢福祉課」が「長寿福祉課」と「介護保険課」に分かれており、高齢者向けサービスに必要な人手が増え続けている(=同サービスへの需要が増えている)という印象を受けました。自治体や海外からの問い合わせも多く、高齢化に対応した行政・街づくり・社会システムに関する需要は相当強いようです。一方、エイジフレンドリーシティへの日本からの参加自治体は秋田市のみ、老年学の専門家が少ない、英語が壁になっている、など供給面では高齢化対応を推進するための組織・知識・人材が不足しているように思います。秋田市のように老年学の見識のあるリーダーが高齢化対応を推進することで、高齢化に対応した社会システムが日本に築かれることを願うばかりです。